デンタルフロスのすゝめ

デンタルフロスのすゝめ


こんにちは、歯科衛生士の熊崎です。

寒い日々から少しずつ暖かくなってきましたね。寒暖差で体調崩さないようにしたいところです。

みなさんはデンタルフロス、通していますか?歯ブラシだけでお口のケアを済ましている方が多いと思います。そこで今回はデンタルフロスの重要性についてお話しします!

1. デンタルフロスとは何か?

歯科衛生士

デンタルフロスとは、歯と歯の間に挟まった食べカスや歯垢(プラーク)を取り除くための細い糸状の清掃器具です。歯ブラシだけでは届きにくい歯間の汚れを効率的に取り除けるため、虫歯や歯周病の予防に欠かせないアイテムの一つとされています。

普段の歯磨きでは、実は歯の表面の60%程度しかきれいにできていないとされており、残りの40%は歯と歯の間や歯ぐきの隙間など、ブラシの届きにくい場所に汚れが残ったままになってしまいます。そこで活躍するのが、デンタルフロスです。糸のように細いため、狭い歯の隙間にも入り込み、プラークを絡め取ってくれるのです。

欧米では、子どもの頃からフロスを使う習慣が根づいており、アメリカ歯科医師会(ADA)もフロスの使用を強く推奨しています。日本でも近年、予防歯科への関心が高まり、フロスの重要性が徐々に認識され始めていますが、まだ「面倒」「使い方がわからない」といった理由で使用していない人が多いのが現状です。

2. なぜ歯ブラシだけでは不十分なのか?

綺麗な歯

毎日の歯磨きをしっかりしているのに虫歯になってしまう…そんな経験はありませんか? それは、歯ブラシではどうしても届かない「歯と歯の間」に原因があるかもしれません。歯ブラシは歯の表面の汚れを落とすのにはとても有効ですが、細い歯間の隙間にまでは毛先が入り込みません。

この歯間には、食べかすや細菌がたまりやすく、放置するとプラークが蓄積されてしまいます。プラークは細菌のかたまりで、これが長時間とどまると酸を出して歯を溶かし、虫歯や歯周病の原因になります。

フロスはこの歯間のプラークを物理的に取り除くための道具です。1日1回でもフロスを使うことで、歯と歯の間の健康を保ち、口臭の予防にもつながります。特に、歯ぐきの腫れや出血が気になる方は、フロスを取り入れることで改善する可能性も高いです。

3. デンタルフロスの種類と選び方

フロスにはいくつかの種類があり、自分に合ったものを選ぶことが重要です。主に「ワックスタイプ」と「ノンワックスタイプ」に分かれます。

  •  ワックスタイプは、糸にワックス(蝋)がコーティングされており、滑りがよく、歯の隙間に入りやすいのが特徴です。初心者や歯間が狭い人におすすめです。
  •  ノンワックスタイプは、コーティングがされていないため、プラークをしっかり絡め取りたい人に向いています。ただし、滑りが悪く少し扱いづらい面もあります。

さらに、フロスの形状にも違いがあります。

  •   **糸巻きタイプ(ロールタイプ)**は、自分の指に巻きつけて使うタイプで、コスパが良く、自由に長さを調整できるのが魅力です。
  •   **ホルダー付きタイプ(フロスピック)**は、プラスチックの持ち手にフロスが張ってあるタイプで、初心者や子どもにおすすめ。手軽に使える反面、使い捨てのためコストはやや高めです。

用途や使いやすさ、歯間の広さなどを考慮しながら、自分に合ったフロスを選ぶようにしましょう。

4. 正しいフロスの使い方をマスターしよう

フロスは、ただ歯間に入れて動かすだけでは十分な効果を得られません。正しい使い方をマスターすることで、初めてその効果が発揮されます。

まず、糸巻きタイプの場合、40cmほどの長さにカットし、両手の中指に巻きつけてピンと張ります。親指と人差し指を使って、歯間にゆっくり挿入していきます。無理に押し込まず、左右に動かしながら少しずつ入れるのがポイントです。

歯ぐきの中まで優しくスライドさせたら、片方の歯の側面に沿わせて上下に動かし、次に反対側も同じようにします。この「C字型」に沿わせて動かすテクニックが重要で、ただ上下に動かすだけではプラークを取り切れません。

ホルダータイプの場合も、同じようにC字に沿わせるように意識して動かしましょう。使い終わったフロスは、その都度捨ててください。

5. フロスの使用頻度とおすすめのタイミング

「フロスは毎日使わないとダメ?」と疑問に思う方も多いでしょう。理想的には、1日1回、就寝前の歯磨き後に使用するのがベストです。寝ている間は唾液の分泌が減るため、口の中の細菌が増殖しやすくなります。その前にフロスで汚れをしっかり取り除くことで、口内環境を清潔に保てるのです。

慣れないうちは3日に1回から始めても構いません。まずは「習慣化」することが大切です。使い続けていくうちに、口の中の爽快感や歯ぐきの引き締まりを実感できるようになります。

6. フロスを使うことで得られる具体的な効果

デンタルフロスを取り入れるだけで、実は多くの健康効果が期待できます。単なる「掃除道具」としてではなく、口腔内の病気を防ぐための強力な味方と捉えると、その真価が見えてきます。

まず一番の効果は、虫歯予防です。特に歯と歯の間にできる「隣接面う蝕(りんせつめんうしょく)」は、歯ブラシでは防ぎきれません。ここにフロスが届くことで、初期の虫歯の発生を大幅に防ぐことができるのです。

また、歯周病の予防・改善にもフロスは大活躍します。プラークが歯周ポケットにたまると、歯ぐきが炎症を起こし、腫れたり出血したりします。フロスでこれを除去すれば、歯ぐきが健康になり、引き締まった印象にもなります。

さらに嬉しいのが口臭予防です。実は口臭の原因の多くは、舌や歯の隙間に残った食べかすと細菌の代謝物。フロスでこれらを取り除くことで、朝起きたときの不快な口臭が激減するのです。口臭ケアアイテムに頼る前に、まずフロスを習慣にしてみましょう。

7. フロスは年齢を問わず使える?子どもや高齢者にも効果的?

「フロスって大人が使うものじゃないの?」という声もありますが、実は年齢を問わず誰でも使えます。むしろ、子どものうちからフロスを習慣化することで、将来的な虫歯のリスクを大幅に減らすことができます。

子どもに使う場合は、扱いやすいホルダータイプのフロスピックがオススメです。親が仕上げ磨きの一環として使うと、自然と子どもも覚えてくれます。最初は嫌がることもありますが、ゲーム感覚で楽しんで習慣づけることがポイントです。

一方、高齢者にとってもフロスは重要。加齢とともに歯ぐきが下がり、歯間が広がることで食べ物が詰まりやすくなります。また、入れ歯やブリッジなどがある場合も、専用のフロス(スーパーフロスなど)を使えば清掃がしやすくなります。

「歯が少ないからフロスはいらない」と考えるのではなく、残っている歯を守るためにこそ、フロスは必需品なのです。

8. フロスと歯間ブラシの違いとは?どちらがいいの?

デンタルフロス

「フロスと歯間ブラシ、どっちを使えばいいの?」と悩む方も多いですが、結論から言えば、どちらも使い分けるのがベストです。両者には明確な違いがあり、それぞれに適したシチュエーションがあります。

  •  デンタルフロスは、狭い歯間や歯ぐきのすぐ下にあるプラークを除去するのに適しています。特に歯と歯が密接している部分や前歯には最適。
  •  歯間ブラシは、歯と歯の間にある程度のすき間がある人向けで、奥歯や歯ぐきが下がって歯間が広がっている場合に便利です。

また、ブリッジや矯正器具のまわりなど、通常のフロスでは届かない部分には歯間ブラシが有効です。つまり、両方の特性を理解して、口内環境に合わせた使い方が理想なのです。

9. フロスを使う際のよくある誤解と注意点

フロスを使っていて、「歯ぐきから血が出た」「痛かった」という経験がある人も多いでしょう。ここで大切なのは、**間違った使い方をしていないか?**を見直すことです。

まず、力を入れすぎて無理やり歯ぐきに押し込むと、歯ぐきを傷つけ出血してしまいます。フロスは優しく滑らせるように使うのが基本。C字型にして歯に沿わせる動きがもっとも効果的で、安全です。

また、1本のフロスをすべての歯に使い回すのもNG。汚れを次の歯に運んでしまうことになりかねません。数本に切って、部分ごとに新しい面を使うようにしましょう。

よくある誤解として、「フロスは毎日使わなくてもいい」と思っている人もいますが、それでは十分な効果は得られません。むしろ、毎日のケアとしてルーティンにすることが健康な歯を守るカギなのです。

10. デンタルフロスが与える印象と美容効果

意外に思われるかもしれませんが、デンタルフロスには美容面でのメリットもあります。

まず第一に、清潔な口内環境を保つことで、笑顔に自信が持てるようになります。歯と歯の間に食べカスが残っていたり、口臭があったりすると、それだけで人とのコミュニケーションに消極的になってしまうことも。フロスを使ってクリアな息と清潔感を維持することで、対人印象は大きく変わります。

また、歯ぐきが引き締まり、ピンク色で健康的になることで、顔全体の若々しさもアップします。加齢とともに歯ぐきが腫れぼったくなると、実年齢以上に老けて見えてしまうこともありますが、日々のフロス習慣がそれを防いでくれるのです。

つまりフロスは、美容と健康、両面から自分を磨くアイテムとしても非常に優秀なのです。

毎日行う歯ブラシにデンタルフロスをする時間まで確保するのは大変かもしれません。ですが、これからの健康のためにデンタルフロスもぜひ活用していきましょう!