食育と歯科の深い関係性

食育と歯科の深い関係性


みなさんこんにちは!

歯を守る歯科西新宿五丁目の歯科衛生士の園川です☆

暑い日が続いていますね。。暑い夏にも負けないように水分補給しっかりして乗り切りたいですね!

今回は、食育と歯科の深い関係について書いていこうと思います。

― 生涯を通じた健康は「口」から始まる ―

1. 食育とは

なぜ今、口から始める教育が必要か

「食育」とは、単なる「食べ方のしつけ」ではありません。

文部科学省が定義するように、食を通じて人間として生きる力を育む総合的な教育であり、心身の成長、生活習慣、社会性、さらには文化や環境への理解まで含む幅広い概念です。

近年、子どもたちの「孤食」「偏食」「早食い」「間食の多さ」など、食生活の乱れが問題となっています。これらの要因は、肥満や生活習慣病だけでなく、歯科的には「虫歯」「歯列不正」「顎の発達不全」といった深刻な問題を引き起こしています。

また、高齢者においても、「噛めない」「飲み込めない」といった口腔機能の低下が栄養不足やフレイル(虚弱)の原因となり、全身の健康に大きく影響を与えることがわかっています。

すなわち、食育は「成長期の子ども」だけでなく、「人生のすべてのステージ」で必要な健康教育なのです。

2. 咀嚼(噛むこと)と歯の成長

口腔機能の発達を支える食育

咀嚼は単なる「食べ物の粉砕作業」ではなく、身体にとって非常に多くの役割を担っています。

【咀嚼の役割】

  • 唾液分泌の促進:唾液には虫歯菌の活動を抑える緩衝作用や、口内の自浄作用があります。
  • 脳の活性化:よく噛むことで脳への血流が増え、集中力や記憶力が向上すると言われています。
  • 顎の発育:噛むことで顎骨が正しく発達し、歯列の安定につながります。
  • 消化吸収の改善:咀嚼により食べ物が細かくなり、消化酵素との接触面が増えることで胃腸の負担を軽減します。

ところが現代では、ファストフードや柔らかい加工食品の普及により、咀嚼回数が著しく減少しています。

調査によると、現代の子どもたちは戦前の子どもと比べ、1回の食事で噛む回数が半分以下とも言われています。これは、歯や顎の成長に悪影響を及ぼし、「受け口」「出っ歯」「叢生(歯が重なって生える)」などの歯列不正を招きます。

【歯科的支援の例】

  • 離乳期からの食べ方指導(スプーンの使い方、固形食への移行など)
  • 咀嚼トレーニング(ガムや硬めの食品など)
  • 食事時の姿勢指導(足が床に着いていないと噛む力が入らない)

などが挙げられます。

3. 虫歯と食生活の関係

食べる「内容」と「時間」が口を左右する

虫歯の発症は、以下の4要素が重なることで起こります。

  1. 歯質(歯の強さ)
  2. 糖質(虫歯菌のエサ)
  3. 虫歯菌
  4. 時間(口腔内の酸性時間)

この中でも「糖質」と「時間」は、食育と深く関わる部分です。

例えば、ダラダラと食べ続けたり、頻繁に甘い飲料を摂取する習慣は、口腔内を長時間酸性に保ち、脱灰(歯の表面が溶ける現象)を促進します。

食育の観点からのアプローチ

  • 間食は時間を決める:食べる時間が明確なら、唾液による再石灰化が間に合います。
  • 飲み物は水やお茶を基本に:ジュースやスポーツドリンクは砂糖含有量が高い。
  • 砂糖の代替食品の活用:キシリトール配合ガムやチーズなど。

これらの知識を子どものうちから身につけることができれば、「甘いもの=悪」ではなく、「甘いものをどう付き合うか」を学ぶことになり、将来の虫歯予防に大きな効果をもたらします。

4. 高齢者の食育と口腔ケア

噛める口を保つことが栄養寿命を延ばす

高齢者においては、「食べる力の維持」が生活の質(QOL)に直結します。

加齢や病気によって歯を失ったり、唾液が減少したりすると、「噛めない」「飲み込みにくい」「むせる」といった問題が起きやすくなります。結果として、食欲が低下し、栄養失調や脱水、さらには「誤嚥性肺炎」などのリスクが高まります。

歯科が果たす役割

  • 義歯(入れ歯)の調整や作製
  • オーラルフレイル(口の機能低下)の早期発見
  • 摂食嚥下機能評価とリハビリ
  • 口腔内の清掃と衛生管理

高齢者への食育は、「栄養を摂ること」だけではなく、「口を使って食べられる環境を整えること」が目的となります。

歯科の関与によって、嚥下機能を維持し、自分の口で最期まで食べられる「人生の締めくくりの質」を支えることが可能になります。

5. 歯科医院と食育の未来

 地域連携で「口から始める健康づくり」

これまで述べてきたように、歯科と食育は切っても切り離せない関係です。そしてその連携は、地域医療の中でも重要なテーマとなりつつあります。

実践例としては

  • 保育園や学校での咀嚼指導・食事観察
  • 管理栄養士と連携した食事相談
  • 地域包括支援センターとの連携で高齢者支援
  • 生活保護家庭や多子家庭への「栄養と口腔の支援プログラム」

歯科医院が単なる「治療の場」から、「健康教育のハブ」として地域に根差していくことが求められています。歯科衛生士による保健指導、管理栄養士とのチーム医療、行政との連携など、専門職の垣根を越えた支援体制が未来の食育には欠かせませんね。

終わりに

食育と歯科の融合が生む「健康の好循環」

「食べること」は、人間にとって最も基本的で、最も大切な行為です。そのスタートラインに立っているのが、「歯」であり、「口」であり、そしてそれを支える歯科医療なのです。

食育と歯科の融合は、単なる知識教育ではなく、「生活そのものを豊かにする学び」です。子どもから高齢者まで、すべての人が「食べる力」を保ち続けるために、歯科はもっと社会に開かれた存在になるべきです。そして私たち一人ひとりが「口の健康=生きる力」として再認識することが、真の食育への第一歩になるのではないでしょうか。

子供たちの生きる力は、「興味」や「意欲」、そして「思いやり」や「感謝」、さらには「コミュニケーション」によって知識などが身につき培われます。大人からいわれるのではなく、子供が主体的に「食べることは楽しい」と思えるたくさんのはたらきかけが大切です。

生涯にわたって健全な心身で生きるための一翼を担うのが、「正しい食習慣」による「必要な栄養を摂る」意識だといえます。

好きな食べものを増やして、誰かと一緒に食べる楽しさを感じたいものです。

「食べる力」を身につけ、楽しく食べられる毎日を過ごして行きましょう!

歯を守る歯科でも、患者さんが健康な口腔状態を維持し、食事や会話を楽しむことで、より満足度の高い生活を送れるようにサポートできればと思っておりますので是非ご来院ください!

スタッフ一同心よりお待ちしておりますm(_ _)m