80代で入れ歯ゼロの患者さんのお話

80代で入れ歯ゼロの患者さんのお話


こんにちは。衛生士の熊崎です。

昼間は半袖で過ごせる時間が増えてきましたね。この前までは乾燥に悩まされていましたが、これからは湿気に悩まされそうです☺

みなさんは年を重ねると必ず入れ歯になると思っていませんか?そこね今回のブログでは80代で入れ歯ゼロの女性のお話を書きたいと思います。

80代で入れ歯ゼロの患者さんのストーリー

はじめに:なぜこの話が特別なのか?

会話する高齢女性達

80代で「入れ歯ゼロ」――このフレーズを聞いて、あなたはどう感じますか?「すごい!」「本当にそんな人いるの?」と驚くかもしれません。事実、80歳を超えても自分の歯をすべて保っている人は、日本では非常に少数派です。それでも、そんな“奇跡”のような口内環境を保っている人が実在するのです。そしてそれは、遺伝や特別な体質の話ではありません。実際に、努力と習慣でその状態を保っている方の物語をご紹介します。

このストーリーは、単なる感動話ではなく、誰にでも実践できるヒントが詰まった“人生の教科書”です。なぜなら、年齢に関係なく「自分の歯で食べる」喜びは、人生の質そのものを左右するからです。しっかり噛めると、消化もよくなり、栄養吸収もアップ。さらに脳への刺激も保てて、認知症予防にもつながるんですよ。

だからこそ、80代でも入れ歯に頼らず生活できる人の生き方は、すべての世代にとって学ぶ価値があるんです。

平均と比べた驚きの事実

厚生労働省の調査によると、日本人の80歳時点での平均残存歯数はわずか「10本前後」。本来、成人の歯は28本(親知らずを除く)ありますから、これは全体の3分の1以下です。そして、80代ともなると半数以上が部分入れ歯か総入れ歯を使用しています。つまり、80代で“天然歯フルセット”を持っている人は1割以下といわれています。

この現実を考えれば、入れ歯なしで生活する人がいかにレアな存在かがわかります。逆に言えば、それを達成した人は何かしら特別なケアや考え方を持っていたはず。そんな彼女の生活に焦点を当てることで、あなた自身の口腔ケアにも活かせるヒントがきっと見つかるはずです。

日本の高齢者と歯の現状

日本は世界でも有数の長寿国ですが、健康寿命――つまり、元気に自立して生活できる年齢――が注目されるようになっています。そして、そのカギの一つが「歯の健康」です。

歯が悪くなると、食べる楽しみが減り、栄養バランスが崩れます。それだけでなく、発音も不明瞭になり、人とのコミュニケーションも億劫になりがち。実際、口腔内の状態が悪い人は、うつ傾向や認知症リスクも高まるという研究結果も出ています。

だからこそ「歯を守ること=人生を守ること」。それを実践してきた一人の女性の実話を、これから詳しくご紹介していきます。

主人公の紹介:80代で天然歯を守り抜いた女性の人生

子どものころの生活と歯の健康

彼女の名は田中ハルさん(仮名)、現在82歳。幼少期は戦後間もない時期で、砂糖やお菓子も手に入りにくく、自然と「甘いものを控える」食習慣ができていました。この環境が、意外にも彼女の口腔環境の土台を築いたのです。

子どものころから歯に関して母親が厳しく、「お菓子のあとは必ずうがい」や「夜は必ず歯を磨く」など、ルールが家庭に根付いていたそうです。戦後の混乱期でも、口の中は清潔に――その意識がハルさんの心に深く残りました。

また、小学生のときに受けた“虫歯治療の痛い経験”が、彼女の歯に対する意識を変えたターニングポイントになりました。「あの痛みは二度と味わいたくない」と感じた瞬間から、日々のケアに力を入れるようになったのです。

食生活と健康意識の変化

和風の食卓

成長するにつれ、食の多様化が進みました。学生時代、就職してからは洋食やファストフード、スイーツなど、誘惑の多い時代になっていきます。ですが、ハルさんは「基本に戻ること」の大切さを感じていました。

あるとき、体調を崩したことがきっかけで「食生活を見直す」ようになり、白米中心の食事から、雑穀米や玄米、野菜たっぷりの和食メニューにシフト。これは歯にも良い変化をもたらしました。よく噛む必要があるメニューが多くなり、あごや歯に適度な負荷がかかることで、歯の土台である骨の健康にもつながったのです。

定期検診との出会い

定期検診の様子

社会人になってからもハルさんは、「虫歯ゼロ」を維持していましたが、ある歯科医との出会いが転機となります。30代後半、たまたま通院した歯医者で「予防歯科」の大切さを説かれ、それまで“痛くなったら行く場所”だった歯科医院のイメージがガラッと変わったのです。

「定期検診こそが、歯を守る最善策です」と語る歯科医の言葉に影響を受け、ハルさんはそれ以来、年に4回(3ヶ月ごと)必ず検診を受けています。これが、80代まで天然歯を守り通した最大の秘訣といえるでしょう。

毎日のケア習慣が支えた歯の健康

正しい歯みがき法の習得

ハルさんは、歯みがきを「儀式」と呼びます。朝晩2回、最低でも5分間は鏡の前に立ち、1本1本を意識しながら丁寧に磨き上げるのが日課。テレビを見ながら、スマホをいじりながら――といった“ながら磨き”は一切しません。

また、歯科医院で教わった「バス法(歯と歯茎の間に斜め45度で当てて磨く方法)」を忠実に守っており、力を入れず、小刻みに動かすことを意識しているそうです。

さらに、歯磨き後の「仕上げ磨き」も欠かさず行っており、舌の掃除や口内のうがい、洗口液の使用など、徹底したケアが日常に根付いています。

歯間ブラシ・フロスの活用

歯磨きだけでは落としきれない「歯と歯の間の汚れ」。ここをきれいにするのに欠かせないのが、歯間ブラシとデンタルフロスです。ハルさんは40代から、歯科医の指導でこの2つを使い始めたといいます。最初は「面倒くさい」と感じたそうですが、使い続けるうちに「口の中がスッキリして気持ちいい」と思うようになり、今では完全に習慣化しています。

特に、寝る前には必ず歯間ブラシを使用。「夜のケアをサボると、翌朝の口臭や粘つきがまったく違う」とハルさん。細い歯間ブラシを歯の隙間にそっと通しながら、プラーク(歯垢)を取り除いていきます。また、月に一度は歯科医院でフロスの使い方チェックも受けており、自分流に偏らないよう注意しているのも、彼女の歯を守る大きなポイントです。

この歯間ケアを習慣にしてからは、歯石の沈着が劇的に減ったと話してくれました。歯間ブラシやフロスを毎日使うことは、虫歯や歯周病を防ぐ最大の予防策。時間はかかりますが、それだけの価値は十分にあるのです。

使っている歯ブラシ・歯磨き粉の種類

「道具選びも、歯を守る大切なポイントです」とハルさんは話します。彼女が愛用しているのは、市販の“柔らかめ”歯ブラシ。理由は、歯ぐきへのダメージを最小限にするため。硬いブラシは汚れが落ちやすい一方で、歯茎を傷つけてしまう可能性もあるため、あえて柔らかいものを選んでいるそうです。

また、歯磨き粉も「フッ素入り」で「研磨剤が少ないもの」を厳選。歯のエナメル質を守ることを重視して、ドラッグストアではなく歯科医院で勧められた専用の製品を使用しています。

特にお気に入りなのが、「再石灰化」を助けるタイプの歯磨き粉。虫歯の初期段階なら、これで治ることもあるという話を歯医者から聞いて以来、ずっと使い続けているとのことです。

さらに、電動歯ブラシについては「手磨きの方が自分の感覚で丁寧に磨ける」と感じているため、あえて導入していません。自分の生活スタイルに合った道具を選ぶ姿勢も、長年の健康維持に大きく寄与しているといえます。

食生活の影響と工夫

甘いものとの付き合い方

「甘いものは大好きです。でも“付き合い方”が大事なんです」と語るハルさん。完全に糖分を絶ったわけではなく、食べるタイミングや種類、頻度に工夫を凝らしてきたといいます。

まず彼女が意識しているのは、“ダラダラ食べ”をしないこと。例えば、おやつを食べるなら午後3時の1回だけに決め、その後には必ず水を飲んで口の中をリセットする。さらに、可能であれば歯磨きをするか、最低でもうがいをするようにしているのです。

また、おやつの選び方にもこだわりがあります。チョコレートやキャラメルのように歯にくっつきやすいものよりも、口の中でスッと溶ける寒天ゼリーやフルーツ、ナッツ類を好んで食べています。こうすることで、虫歯リスクを極力抑えながらも、甘いものを楽しむことができるのです。

「我慢するばかりではストレスが溜まる。上手にコントロールすることが大切」と語る彼女の考え方は、非常に現実的で真似しやすいアプローチです。

噛む力を育てた食習慣

80代になってもステーキやタコの刺身をしっかり噛んで食べるハルさん。その噛む力は、日々の食生活によって養われてきました。

若い頃から「よく噛む」ことを意識し、柔らかいものばかりに頼らない食事を続けてきたそうです。たとえば、朝食には雑穀米入りのおにぎりと味噌汁、昼は根菜がたっぷり入った煮物、夜は魚や豆腐を中心とした和食。これらはどれも咀嚼を必要とするメニューです。

また、食べるときには「1口30回」を目標に噛むようにしており、それがあごの筋肉や歯の土台となる骨を鍛える要因になったといいます。柔らかいパンや麺ばかり食べる現代人とは一線を画す食習慣が、彼女の“噛む力”を支えているのです。

この習慣は、単に歯だけでなく消化や満腹感にも良い影響を与えるため、結果的に健康全体の底上げにつながっているのが素晴らしい点です。

和食中心のバランス食事法

ハルさんの食卓は、いわゆる“昭和の食事”そのもの。白米だけでなく、玄米・雑穀米・納豆・味噌汁・煮物など、和食を基本としたメニューが日々並びます。このような和食中心の食生活は、歯にとっても非常にメリットが多いのです。

まず、和食は「よく噛む食材」が多く含まれており、自然と咀嚼回数が増えます。さらに、繊維質の多い野菜や海藻類は、歯の汚れを落とす「天然の歯ブラシ」とも言われており、食べながら歯をきれいにしてくれる効果もあります。

また、発酵食品の摂取量も多く、腸内環境が整いやすいため、免疫力の向上にもつながり、歯周病などのリスクも減らせるのです。加えて、砂糖や脂肪の使用が少ないことから、虫歯の原因となるプラークの発生も抑えられます。

「昔ながらの食事って、実は一番理にかなってるのよね」とハルさん。流行りの健康法に飛びつくのではなく、自分に合った食事を継続することが、歯にも体にも最善の道であることを体現してくれています。

予防歯科との付き合い方

3ヶ月ごとの定期健診ルーティン

ハルさんが“入れ歯ゼロ”を実現できた最大の理由のひとつが、この「3ヶ月に1回の定期健診」です。多くの人が「痛くなってから歯医者に行く」スタイルをとる中で、彼女は40年以上、予防のために歯科医院に通い続けています。

そのルーティンは徹底していて、毎回の健診では以下のことを行っています:

  • 歯のクリーニング(スケーリング)
  •  歯茎のチェック(歯周ポケットの深さ測定)
  •  虫歯の早期発見チェック
  •  フッ素塗布

これにより、問題が小さいうちに見つかり、治療も最小限で済むのです。ハルさんいわく、「定期健診は、歯を100%使い続けるための“投資”」とのこと。1回の費用は数千円ですが、それで入れ歯やインプラントなどの高額治療を避けられるなら、むしろお得だと語ります。

また、同じ歯科医院に長年通っているため、自分の口の中を熟知している医師がついており、安心感も抜群。歯科衛生士との信頼関係も厚く、「いつもの衛生士さんに歯を見てもらうとホッとする」と微笑む彼女の表情には、確かな信頼がにじみ出ていました。

かかりつけ歯科医の存在

誰にでも「かかりつけ医」が必要なように、歯にも「かかりつけ歯科医」の存在は非常に重要です。ハルさんはもう30年以上同じ歯科医院に通っています。なぜそこまで信頼を寄せるのかと聞くと、「先生が“未来の歯”まで考えてくれるから」との答えが返ってきました。

歯科医の先生は、ただ目の前の虫歯を治すだけではありません。噛み合わせの変化、歯の傾き、歯茎の状態など、数年後・数十年後に起こり得る問題を予測して、今から対策を練ってくれる存在です。

例えば、ハルさんが60代の頃、歯の一本が少し傾き始めたときには、「今のうちに矯正具で微調整しましょう」との提案を受け、軽度な補正を行いました。そのおかげで他の歯にも影響が出ず、現在まで快適に噛むことができています。

かかりつけ歯科医との継続的な関係性が、年齢を重ねても“自分の歯で噛める”未来を守ってくれるのです。

自費治療への投資判断

予防に力を入れるということは、ときに「自費治療」も選択肢になります。ハルさんも、必要なときには保険適用外の治療を選んできました。特に、セラミックの詰め物や、より長持ちする被せ物には自費で対応。見た目だけでなく、耐久性や安全性を重視しての選択です。

「保険がきかなくても、それで10年20年トラブルが起きないなら、その方が安上がり」と語るハルさん。お金をかけるべきところと、かけなくてもよいところを見極めながら、自分にとって最適な選択をしてきました。

実際に、彼女は歯を1本も失っていないどころか、詰め物のやり直しも少ないそうです。これも、質の高い材料と技術に投資してきた成果です。

歯の健康は「お金をかける価値のある分野」。この視点は、人生100年時代を生きる私たちにとって、非常に重要な考え方です。

まとめ:80代で入れ歯ゼロを実現するために必要なこと

高齢夫婦を囲む家族

ハルさんのストーリーから学べることは数多くあります。決して「特別な体質」や「高価な治療」だけが、歯を守る鍵ではありません。むしろ、日々の小さな積み重ねと、自分に合った歯科医との信頼関係が、何よりも大切なのです。

ポイントをおさらいすると:

  • 子どもの頃からの習慣と教育
  • よく噛む和食中心の食生活
  • 毎日の丁寧な歯みがきと歯間ケア
  • 甘いものとの賢い付き合い方
  • 3ヶ月ごとの定期健診
  • 自費治療を含めた予防への投資
  • 信頼できるかかりつけ歯科医の存在

これらをしっかり意識し、実行すれば、あなたも「80代でも入れ歯ゼロ」を目指せるはずです。歯は命の入り口――その言葉を信じて、今日から自分の歯をもっと大切にしてみませんか?

よくある質問(FAQs)

Q1. 入れ歯なしで80代まで過ごすのは本当に可能ですか?
はい。今回ご紹介したように、正しい習慣と予防ケアを続ければ可能です。

Q2. 定期健診はどのくらいの頻度で行けばいいですか?
理想は3ヶ月に1回。最低でも半年に1回は受けましょう。

Q3. 歯磨き粉は何を使えばいいですか?
フッ素入りで研磨剤が少ないものがおすすめ。歯科医院で相談すると確実です。

Q4. 歯間ブラシとフロス、両方使った方がいいですか?
はい。部位によって使い分けることで、清掃効果が高まります。

Q5. 歯科治療は保険内だけで十分ですか?
症状によっては自費治療の方が長持ちし、結果的に経済的な場合もあります。

私もこの仕事に就くための専門学校に通い始める前から、自分の口の中への意識を高めてきました。家族にも知識を伝えたり、大切な人のお口の健康を守ることができるこの仕事に誇りを持っています。

これからもどんどん知識が増えると思うので、たくさんの方に歯の大切さを伝えていきたいと思います。