むし歯になりやすいのはどの歯?|意外と知らない“むし歯リスク”の真実

むし歯になりやすいのはどの歯?|意外と知らない“むし歯リスク”の真実


こんにちは、歯科衛生士の熊崎です。

寒い季節になりましたね。インフルエンザもまだまだ油断できないので、手洗いうがい、しっかりご飯を食べて体調管理をしましょう!

最近友人にむし歯はどのあたりに多くできるかを聞かれたので今回はこちらのタイトルでブログを書きます。

【むし歯になりやすいのはどの歯?|意外と知らない“むし歯リスク”の真実】

むし歯は、誰にでも起こり得る身近なトラブルですが、「どの歯が特にむし歯になりやすいのか?」を意識している人は意外と少ないものです。実は、歯の形や位置、日常のケア方法によって、むし歯になりやすい歯・なりにくい歯に違いがあります。

今回のブログではむし歯リスクが高い歯の特徴と、その理由について分かりやすくまとめます。今日から意識できるむし歯予防のヒントも紹介します。

虫歯になった歯

むし歯になりやすい歯①:奥歯(第一大臼歯・第二大臼歯)

もっともむし歯になりやすいといわれているのが、奥歯にあたる「臼歯(きゅうし)」です。特に生えたばかりの“6歳臼歯(第一大臼歯)”は、むし歯のリスクが非常に高いことで知られています。

その理由は主に以下の3つです。

 溝が深く汚れが溜まりやすい

奥歯の噛む面には複雑で深い溝があり、食べカスが残りやすい形をしています。歯ブラシでも磨き残しが出やすく、むし歯菌の温床になりやすいのです。

 見えにくく、磨きにくい位置

奥にあるため視界に入りづらく、手の届きにくい場所です。子どもはもちろん、大人でも完璧に磨けていない人が多い部分です。

 子どもの時期に最初に生えてくる永久歯

6歳頃に生える最初の永久歯ですが、生えたばかりの歯は表面が弱く、むし歯になりやすい性質があります。この時期のケア不足が、将来のむし歯トラブルにつながることも。

特に6歳臼歯は、一生使い続ける大切な歯。シーラント(溝を樹脂で埋める処置)やフッ素塗布で予防するのも効果的です。

むし歯になりやすい歯②:前歯(特に上の前歯)

虫歯になりやすい前歯

「前歯は磨きやすいからむし歯になりにくい」と思っている人も多いのですが、上の前歯は意外にもむし歯が発生しやすい歯です。特に小さな子どもでは“哺乳びんむし歯”としてよく見られます。

むし歯になりやすい理由は以下の通りです。

 砂糖を含む飲み物を口に溜めやすい

ジュースやスポーツドリンク、甘いミルクなどを飲む習慣があると、前歯の裏側に液体が溜まりやすく、むし歯菌が繁殖しやすくなります。

 乾燥しやすい

口呼吸のクセがあると前歯が乾きやすくなり、唾液の保護作用が弱まるため、むし歯になりやすくなります。

前歯のむし歯は見た目にも関わるため、早めの予防がとても大切です。

むし歯になりやすい歯③:歯と歯の間

歯と歯の間

歯と歯の隙間は、歯ブラシだけでは十分に汚れを落としにくい部分です。そのため、むし歯の発生率が高く、気づいたときにはかなり進行しているケースも少なくありません。

  •  プラークが溜まりやすいにも関わらず見えにくい
  •  食べ物が挟まりやすく、菌が繁殖しやすい
  •  フロスを使っていない人が多い

特に大人に多い「隣接面むし歯」は、フロス習慣がある人とない人で発生率が大きく変わります。

むし歯になりやすい歯④:歯ぐきとの境目(歯頚部)

歯と歯茎の境目

歯と歯ぐきの境目は、年齢に関係なくむし歯リスクが高い場所です。ここは歯ブラシの角度が合っていないと磨き残しやすいポイント。

さらに、歯周病や加齢により歯ぐきが下がると、根元部分(象牙質)が露出し、そこがむし歯になりやすくなります。

象牙質はエナメル質よりも弱いため、むし歯の進行も早く、気づいたころには大きく広がっていることもあります。

むし歯になりやすい傾向のある人の特徴

むし歯になりやすい歯だけでなく、「むし歯ができやすい体質・習慣」を持つ人もいます。

  •  甘い物をよく食べる
  •  口呼吸のクセがある
  •  歯みがきが雑、または1日1回以下
  •  歯並びが悪く、磨き残しが多い
  •  唾液が少ない(ストレス・加齢・薬の副作用など)

これらに心当たりがある場合は、普段より意識してケアをすることが大切です。

むし歯になりやすい歯を守るための予防法

デンタルケア用品

むし歯を防ぐための基本は「磨き残しを減らすこと」。そのために効果的な習慣を紹介します。

 フロスを毎日使う

歯ブラシだけでは60%しか汚れが落ちないといわれています。フロスと併用すると90%近くに。

 奥歯の溝に注意して磨く

軽く小刻みに動かすと、溝に届きやすくなります。

 フッ素入りの歯磨き粉を使う

毎日使うことで、歯の再石灰化を助けむし歯に強くします。

 定期検診で早期発見

自分では気づけないむし歯を見つけてもらえるため、半年〜1年に1回はチェックを。

むし歯になりやすい人が特に注意すべきポイント

むし歯になりやすい歯や場所を理解したうえで、さらに “むし歯体質” と言われる人が意識すべきポイントがあります。

むし歯は「歯質」「細菌」「糖分」「時間」の4つが重なることで発生しますが、この4つの要素をどれだけコントロールできるかが、むし歯予防のカギになります。

1.歯質

まず歯質についてですが、これは個人差が非常に大きい部分です。エナメル質の硬さ、唾液の量、唾液の質などは生まれつきの体質によるところも大きく、むし歯になりやすい人は唾液の分泌が少なかったり、再石灰化の働きが弱かったりします。だからこそ、フッ素を活用して人工的に歯質を強化することがとても重要です。

2.細菌

次に細菌ですが、むし歯菌の量は生活習慣によって大きく変わります。同じ食生活をしていても、歯磨きの習慣やフロスの使用頻度、舌の清掃をしているかどうかなどで菌の量は大きく変化します。むし歯ができやすい人は、歯磨き習慣を見直すだけで驚くほど改善することがあります。

3.糖分

糖分については、甘い物を「食べる量」よりも「口の中にとどまる時間」のほうが重要です。例えば、砂糖入りコーヒーを1時間かけてちびちび飲むと、むし歯菌がずっと働き続けてしまうため、むし歯のリスクが高まります。同じ量の糖分でも、ダラダラ時間をかけて摂るほうが危険というわけです。

4.時間

そして最後に時間。むし歯菌が歯を溶かし続ける時間を短くするために、こまめなうがいや歯磨きが効果的です。

こうしたポイントを理解することで、「むし歯になりやすい人」が、むし歯リスクを大幅に減らすことができます。

歯科医がすすめる“むし歯になりにくい生活習慣”

むし歯予防は、歯磨きだけでなく生活習慣の見直しも不可欠です。歯科医が推奨する具体的な習慣をいくつか紹介します。

1.間食の回数を減らす

まず、間食の回数を減らすこと。甘い物を完全にやめる必要はありませんが、食べる時間を決めたり、だらだら食べを避けたりするだけでもむし歯リスクは大きく減少します。また、食後のうがいはとても有効で、特に砂糖や酸を含む飲食物を摂った後の口内環境を整えるのに役立ちます。

2.寝る前のケア

次に、寝る前のケアを極めること。就寝中は唾液の量が大幅に減るため、もっともむし歯が進行しやすい時間帯になります。このタイミングで汚れが残っていると、むし歯菌が活発に働きやすくなるため、寝る前の歯磨きは特に丁寧に行うべきです。

3.キシリトールを取り入れる

さらに、キシリトールを取り入れるのもおすすめです。キシリトールはむし歯菌のエサにならないだけでなく、菌の働きを弱める効果もあるため、食後などにキシリトールガムを噛むことでむし歯予防効果が得られます。

生活習慣を整えることで、むし歯になりやすい人でも確実にリスクを減らすことができます。

むし歯になりやすい子どもへのサポート方法

子どものむし歯は、大人以上に予防とケアが重要です。特に乳歯はエナメル質が薄く、むし歯の進行が早いため、早期発見・早期治療が欠かせません。

1.仕上げ磨き

まず、仕上げ磨きは小学生低学年まで続けるのが理想です。子どもはどうしても磨き残しが多く、特に奥歯や上の前歯の裏側はセルフケアでは十分に磨けません。1日1回でいいので、親が丁寧にサポートすることでむし歯の発生率は劇的に減ります。

2.間食の内容

また、間食の内容も非常に重要です。砂糖の多いお菓子はもちろん、ジュースやスポーツ飲料などの“飲む砂糖”にも注意が必要です。代わりに果物やチーズなど、むし歯のリスクが比較的低い食品を取り入れると良いでしょう。

3.歯医者でのケア

さらに、歯医者でのフッ素塗布やシーラントは子どものむし歯予防にとても効果的です。特に6歳臼歯は生えてすぐに溝が深く、むし歯になりやすいため、シーラントで溝を保護することでリスクを大きく減らせます。

虫歯を治療した歯

子どもの未来の歯を守るために、家庭と歯科医院の両方でサポートしていくことが大切です。

まとめ

むし歯になりやすい歯には、はっきりした特徴があります。特に奥歯や歯と歯の間、歯ぐきとの境目は要注意ポイント。毎日の歯磨きに少し意識を加えるだけで、むし歯リスクは大きく減らせます。

自分や家族のむし歯予防のためにも、今日から“磨きにくい場所を丁寧にケアする”習慣をはじめてみてください。